★壊滅作戦
★我が家はアリさんたちがゲリラ活動をしている。
その目的は不明。
アリさんにはアリさんの事情ってもんがあるんだろう。
木組みの家ゆえにひび割れ隙間は無数に存在する。
警戒は極めて手薄なため
侵入は容易だ。
が、やはり快適生活のためにはアリさんは邪魔な存在だ。
ミント、柑橘系のエッセンシャルオイルはアリさんが嫌うというので試してみたが持続性がない。
ユーカリもラベンダーも効果があるらしい。
なんで我が家にあるエッセンシャルオイルを知っているのかと思うくらいだ。
しかしケチなので飲めるグレードのエッセンシャルオイルをアリさんに使うのはもったいない。
注)ユーカリは毒性があるらしいので飲んではいけません。飲んでみたけど( ´艸`)
さて・・・。
末端の兵隊を狙っても解決にはならない。
痛みの原因はその場所に必ずしもあるとは限らないのだ!
意を決して
侵入経路を偵察することにした。
デッキ下に段ボールを敷き
第5匍匐をする。
もちろん頭は地面にはこすらない。
かかとは思いっきり上げる。
「弾に当たって死にてーのか!おらあ!!」
新隊員教育隊ならば間違いなく班長の罵声と蹴りが入るレベルだ。
陸曹上級課程ならそんなことは言われない。
そもそも命令の作成と実員指揮要領の演練が目的だし
30代か50代の学生はからだもこころも固くなっているのだ。
いい歳して出た腹と顔を草に擦りつけたくはないのだ。
高いのは士気ではなく血圧だ!
だから、土まみれになるのは嫌だ!
ここには自己裁量の余地しか存在しない。
自分さえ良ければいいのだ。
骨折した胸骨がピリッと痛む。
養生中の無理は禁物だ。
このことだけは忘れてはいけない。
長引けば今後の就活にも影響するからだ。
我が家の出没場所に近い部分を偵察する。
数匹が換気口脇のの基礎の角部分を上がっていき
土台と水切り板のわずかな隙間に吸い込まれるように消えていく。
「はは~~~ん、ここから入っていくんだ!」
アリさんは目がよく見えないらしいのだけれど
対向してくる仲間と頭や触覚をあわせて何やら情報交換をしているようだ。
「こんなことしても、なんも意味ね~よ!!」
「まあまあ、そうぼやくなよ!仕事だからさ~。」
そんな会話でもかわしているのだろうか?
どうやら偵察されていることには気づいてはいないらしい。
動きはいたって平穏だ。
数はそれほど多くはない。
超まばらな行列が
果たしてどこに向かっているのか?
静か~に偵察する。
匍匐の進路を東にとる。
3枚の段ボールを足元から当方に次々に移動させる。
アリさんは基礎の線から30cmほど南側を東に向かって移動している。
土と似た色に偽装したアリさんを静か―に観察する。
あせっても巧みな偽装で見極めるまで時間がかかるだけだ。
「急がば回れ」だ。
至近距離ではないのだけれど
少々ピントが合いにくいのは偽装の巧みさのみならず、
年齢も少しは関係あるのかもしれない。
ゆっくりゆっくり匍匐する。
ひょろ~~んと伸びるスギナ。
デッキの下には11年間、手つかずの歴史がある。
割り箸、ねじ、プラスチックの骨だけになった団扇・・
使えなくなって捨てたビデオカメラがあったが、
なんと!その小さなリモコンまで落ちていた。
どうりで探してもなかったはずだ。
だれだここに落とした奴は!!
南西角の基礎の角にも行列が出来ている。
確かここからもアリさんが出現していた時があった。
南西角の行列が合流し
超まばらだった行列は少しアリさん密度が上がっている。
デッキ下にはどうやらアリさんの巣はないらしい。
東側のデッキの縁まで来た。
アリさんの親分に見つからないように
デッキ下に身を隠しながら
行列の行く先を偵察する。
どうやらトウヒの木まで続いていることがわかった。
その距離約10m。
アリさんの司令部へ航空攻撃を実施することにした。
ネットで見た夜間の「熱湯投下作戦」
極力環境と健康に配慮して殺虫剤は使いたくない。
アリさんに罪はなくこころが少し痛むけれど
人間なのでやはり快適生活がしたいのだ。
トウヒの根元を偵察する。
(巧みな偽装で47歳の目をごまかす)
沢山のアリさんの巣の出入り口の中でも
とりわけアリさんたちが多く出入りする穴があった。
多分ここがアリさんの司令部の主要な出入り口なのだろう。
その他にも多くのアリさんが出入りする穴を詳細に記憶する。
たかがアリさんの駆除にここまで書く自分は一体何なのだろう?
気を取り直して続けたいと思う。
キッチンに向かい出撃の準備を進める。
薬缶(ケトル)にナミナミと水を入れIHの湯沸かしモードのSWを押す。
ほどなくして
ケトルがボコボコと音を立て、
蓋がガタガタと踊りだし
蒸気と共に熱湯が舞散る。
ピーピーとけたたましく出撃準備完了の音が鳴る。
ケトルを慎重に手に取り持ち上げる。
歩く足は慎重そのものだ。
ナミナミとあふれんばかりの熱湯が足にかかっては一大事。
作戦はその時点で失敗するからだ。
クロックスもどきのサンダルをひっかけ
ドアのレバーを下げて、肩でドアを押す。
ケトルに不要な動揺を与えてはいけない。
緊張が走る。
熱いのは嫌いだ!
ネコ足なのだ。
アリさんたちは相変わらず気づいていないようだ。
ワーグナー「ワルキューレの騎行」が頭中に流れる。
↓ ↓ ↓
「投下」